好きだったものを葬儀に飾ってもいい?
「父は釣りが好きだったから、釣り竿を飾ってあげたい」
「母が作った作品を、皆さんにも見てもらいたい」
「旅行が好きだったので、思い出の写真を並べたい」
葬儀の打ち合わせをしていると、このようなお話を伺うことがあります。
葬儀というと、祭壇やお花、遺影写真などを思い浮かべる方が多いかもしれません。
けれど、故人様が好きだったものや大切にしていたものを会場に飾ることも、お別れのひとつの形です。
特別な決まりがあるわけではありませんので、「これを飾ってあげたい」というものがあれば、まずは葬儀社に相談してみるとよいでしょう。
「その人らしさ」が伝わるものを
会場に飾るものは、高価なものである必要はありません。
たとえば、
・趣味で使っていた道具
・旅行先で集めた思い出の品
・ご自身で作った作品
・愛用していた帽子やカバン
・好きだった本
・仕事で長年使っていたもの
・表彰状や賞状
・家族との思い出の写真
・好きだったスポーツに関するもの
・いつも身近に置いていたもの
などがあります。
釣りが好きだった方なら、釣り竿や釣った魚と一緒に写った写真。
ゴルフが好きだった方なら、愛用していたクラブや帽子。
書道や絵をされていた方なら、ご本人が作られた作品。
旅行が好きだった方なら、旅先の写真や記念品。
お仕事を大切にされていた方なら、仕事道具や制服、長年使っていた品物なども、その方らしさを伝えてくれます。
「これといえば、お父さんだったね」
そんなふうにご家族が自然に思い浮かべられるものが、その方らしい飾りになるのだと思います。
飾ったものから、思い出話が始まることも
故人様の愛用品が会場にあると、参列された方との会話が生まれることがあります。
「この釣り竿、よく使っていたね」
「この写真の旅行、私も一緒に行ったんですよ」
「会社ではいつもこの鞄を持っていました」
ご家族が知らなかった故人様の一面を、友人や仕事仲間から聞くこともあります。
葬儀では、どうしても挨拶や焼香などに意識が向きがちです。
そんな中で、思い出の品がひとつ置いてあるだけでも、故人様のことをゆっくり思い出すきっかけになります。
葬儀の場で交わされた何気ない会話が、あとになって心に残ることもあります。
写真は一枚だけでなくても大丈夫です
遺影写真は一枚ですが、その方の人生にはたくさんの表情があります。
若い頃の写真。
結婚された頃の写真。
家族旅行の写真。
仕事をしている時の写真。
趣味を楽しんでいる時の写真。
お孫さんと一緒に笑っている写真。
何枚か並べてみると、遺影写真だけでは伝わらない、その方の日常や歩んできた時間が見えてきます。
最近では、会場の一角に写真を並べたり、写真ボードを作ったり、スライドショーとして上映したりすることもあります。
立派な写真である必要はありません。
少しピントが合っていなくても、昔の小さな写真でも、ご家族にとって大切な一枚なら、それで十分です。
「何を飾ればいいか分からない」場合は?
いざ考えてみると、
「父は特に趣味がなかった」
「何を飾ればいいのか思いつかない」
という方もいらっしゃいます。
そのような場合も、無理に何かを用意する必要はありません。
普段よく着ていた服や帽子。
いつも座っていた場所で撮った写真。
好きだった食べ物の写真。
家族で撮った何気ない一枚。
そうした日常の中に、その方らしさが見つかることもあります。
ご家族で昔の写真を見ながら、
「そういえば、これが好きだったね」
「こんなこともあったね」
と話してみるだけでも、いろいろな思い出が出てくるかもしれません。
会場に飾れるものと、棺に入れられるものは違います
ここで知っておいていただきたいのが、
「会場に飾ること」と「棺の中に入れること」は別
ということです。
会場に飾ることができても、火葬の際には棺の中へ入れられないものがあります。
火葬場によっても異なりますが、一般的には、
・金属製品
・ガラス製品
・陶器
・電池が入ったもの
・大きなぬいぐるみ
・厚い本
・大量の衣類
などは制限される場合があります。
思い出の品だからこそ、
「最後に持たせてあげたい」
と思われることもあるでしょう。
その場合は、棺に入れてよいものかどうか、事前に葬儀社へ確認することをおすすめします。
入れることが難しい場合でも、会場に飾ったり、お別れの際に棺の近くへ持ってきたりするなど、別の方法を考えることもできます。
特別な演出をしなくても大丈夫です
葬儀で思い出の品を飾ることは、決して「何か特別なことをしなければならない」という意味ではありません。
たくさん飾る必要もありません。
写真一枚でも、愛用品ひとつでも十分です。
反対に、何も飾らず、静かにお別れをする形ももちろんあります。
大切なのは、見栄えよく飾ることではなく、
「この人は、どんなことが好きだっただろう」
「どんな時間を大切にしていたのだろう」
と、ご家族で故人様のことを思い返してみることです。
そこから、
「そういえば、こんなことがあったね」
「お父さん、これが本当に好きだったね」
そんな会話が生まれることもあります。
好きだったものや大切にしていたものを飾ることは、その人らしさを表すためだけではありません。
故人様との時間を振り返り、ご家族や親しい方同士で思い出を話すきっかけにもなります。
もし「これを飾ってもいいのかな」と迷うものがあれば、葬儀の打ち合わせの際に一度相談してみてください。
その方らしいお別れの形を考える材料のひとつになるかもしれません。